トレーラー軌跡図の書き方:セミトレーラーの直角旋回とバック走行

トレーラーの軌跡図を描くとき、諸元表の最小回転半径をそのまま円弧にしても答えは出ません。セミトレーラ連結車はトラクタと被牽引車が連結点で折れながら曲がるので、前輪の通る線と被牽引車の後輪の通る線が一致しません。本稿は道路構造令の設計車両であるセミトレーラ連結車の諸元から出発して、直角旋回とバック走行の軌跡図の書き方を扱います。
道路構造令が定めるセミトレーラ連結車の諸元
道路構造令(昭和45年政令第320号)第4条第2項は、道路の設計の基礎とする自動車を「設計車両」と呼び、小型自動車、小型自動車等、普通自動車、セミトレーラ連結車の4種類について諸元を表で定めています。数値は法令の表そのものに載っていて、e-Gov法令検索で無償で読めます。
| 項目 | セミトレーラ連結車 |
|---|---|
| 長さ | 16.5m |
| 幅 | 2.5m |
| 高さ | 3.8m(重要物流道路である普通道路では4.1m) |
| 前端オーバハング | 1.3m |
| 軸距 | 前軸距4m・後軸距9m |
| 後端オーバハング | 2.2m |
| 最小回転半径 | 12m |
同じ表の備考が用語を定義しています。前端オーバハングは車体の前面から前輪の車軸の中心まで、軸距は前輪の車軸の中心から後輪の車軸の中心まで、後端オーバハングは後輪の車軸の中心から車体の後面までの距離です。寸法を作図ソフトに入力するときは、この基準点の取り方をそろえておかないと図が合いません。
もう1つ、この表は道路が受け入れるべき車両の諸元であって、公道を走れる車両の最大値ではありません。車両側の上限を定めるのは車両制限令です。
12mという数字だけでは連結車の可否は判断できない
車両制限令(昭和36年政令第265号)第3条第1項は、道路法第47条第1項の最高限度として幅2.5m、長さ12m、高さ3.8m(道路管理者が指定した道路では4.1m)などを定め、そのうち第5号で「最小回転半径 車両の最外側のわだちについて十二メートル」としています。道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)第6条も同じ12mを定め、けん引自動車と被けん引自動車は連結した状態でこの基準に適合しなければならないとしています。
ここが連結車の要点です。12mが縛っているのは、連結した状態の最外側のわだち、つまり最も外を通る車輪が描く線だけです。被牽引車の後輪はそれよりかなり内側を通り、トラクタの前隅は車輪の線よりさらに外へ張り出します。空けておくべき幅は外側の線と内側の線の差として決まるもので、半径1つでは表せません。トラクタ単体の諸元表に載っている最小回転半径は、なおさら組合せの答えになりません。
長さについても、2つの令は別のことを言っています。車両制限令の一般的制限値は長さ12mですが、同条第3項は、高速自動車国道を通行し積載貨物が被牽引車から前後にはみ出していないものについて、セミトレーラ連結車は16.5m、フルトレーラ連結車は18mとしています。道路構造令の設計車両が16.5mなのはこちらに対応します。なお、一般的制限値を超える車両を通行させる場合には特殊車両通行許可制度と特殊車両通行確認制度がありますが、本稿が扱うのは図面上で通行可否を確かめる作業です。
トラクタと被牽引車は別の半径を描く
連結車が曲がるとき、順に次のことが起きます。
- トラクタの前輪が操舵され、作図した経路をたどります。
- トラクタの後軸は、それより内側の半径を通ります。
- トラクタは後軸まわりに向きを変え、連結点をその円弧に沿って動かしていきます。
- 被牽引車は連結点から引かれ、その後軸はトラクタの後軸よりさらに内側を通ります。
後輪が前輪より内側を通るこの差を内輪差と呼びます。連結車では内輪差が2段階で積み上がるため、被牽引車の後輪は経路のかなり内側を走ります。縁石や標識柱、照明柱との接触は、この内側で起こります。
外側では逆のことが起きます。トラクタの前隅は前端オーバハング(設計車両で1.3m)の先にあるため、前輪が通る線よりさらに外側を通ります。後端オーバハングも2.2mありますから、旋回を始めた直後は被牽引車の後端がいったん外側へ振り出し、それから内側へ引き込まれます。
軌跡図が示す掃過範囲を作図するとき、いちばん間違えやすいのが内側の境界です。内側を決めるのは車体後部の角ではなく、車軸位置にある後輪です。後部の角をなぞると掃過範囲が実際より狭く描かれ、本当は通れない幅を通れると判断してしまいます。
直角旋回軌跡図とJASO Z006の様式
日本の実務では、直角旋回の軌跡図に決まった様式があります。自動車技術会規格JASO Z006:1992「セミトレーラ及びフルトレーラの直角旋回軌跡図の様式」がそれで、1972年制定、1992年改正、2024年確認です。英文名は「Form of 90° turning locus diagram for combination of tractor and semitrailer, full trailer」です。国内の作図ソフトはこの様式での出力に対応しています。
この規格が定めているのは図面の様式であって、車両の寸法でも最小回転半径の値でもありません。PathSweeperはこの様式の用紙を出力するものではなく、作図した形状をDXF/DWGとして書き出します。様式が必要な場面では、書き出した形状をCAD側の様式に載せることになります。
バック走行と切り返しの軌跡
搬入路や荷捌き場では、前進で入って後退で着けるのが普通です。PathSweeperは連結車の後退に対応しており、後退時の軌跡は最後尾の被牽引車の後軸を基準に計算されます。前進と後退では同じ経路でも掃過範囲の形が変わるので、実際に走らせる順序どおりに、後退する区間は後退として作図してください。切り返しを含む場合は、区間ごとに向きを切り替えて描きます。
扱えるのは、セミトレーラ連結車のように連結点が1つの組合せまでです。フルトレーラ連結車は対象外で、入力しても正しい形は出ません。
PathSweeperで連結車の軌跡図を描く手順
PathSweeperはブラウザだけで軌跡図を描くツールです。インストールもアカウントも不要で、汎用の標準車両4種(乗用車・小型貨物車・2軸トラック・バス)での確認とPNG/JPEGの書き出しは無料です。収録している設計車両は6つの国別ライブラリの70車種以上で、日本の設計車両は含まれていません。道路構造令の数値で描く場合は、任意寸法の車両として自分で入力します。任意寸法の車両を作って保存すること自体は、アカウントにログインしていれば無料です。作った車両をプロジェクトの作図に使うときに、そのプロジェクトのProject Pass(プロジェクトパス)またはAnnual Passが必要になります。
- 図面を読み込みます。画像(5 MBまで)はアカウントなしで、PDFは無料アカウントへのログインで読み込めます。DWG/DXFの読み込みにはProject Passが必要です。
- 「縮尺」で既知の2点間の距離を入力し、図面の縮尺を合わせます。DXF/DWGで書き出すには縮尺合わせが必須です。
- 「車両」から任意寸法の車両を作り、連結車として入力します(作成と保存は無料で、この車両をプロジェクトの作図に使う段階でProject Passが必要になります)。トラクタ側と被牽引車側の軸距は別々の欄です。トラクタ側には道路構造令の前軸距4mがそのまま入ります。被牽引車側の欄は連結点から後軸までの距離ですが、道路構造令の後軸距9mは同令の備考どおり車軸の中心から車軸の中心まで、つまりトラクタの後軸から被牽引車の後軸までの距離です。基準点が違うので、9mをそのまま入れることはできません。次の手順で入れるカプラオフセットの分だけ長い値になります。
- 連結点の位置(カプラオフセット)は、トラクタの後軸からの距離として入力します。第五輪(カプラ)が後軸より前にある通常の組合せでは負の値です。道路構造令は第五輪の位置を定めていないので、この値は実車のトラクタの諸元から取ってください。カプラが後軸の真上にあるとみなして0を入れるなら、被牽引車側の軸距は後軸距と同じ9mです。カプラが後軸より前にあるなら、前に出ている距離をカプラオフセットに負の値で入れ、同じ距離を9mに足した値を被牽引車側の軸距に入れます。どちらの前提で描いたかは図面に書き添えてください。被牽引車の前端オーバハングは連結点から測るので、連結ピン(キングピン)が被牽引車の前端にある一般的な形なら0になります。最大連結角度も実車の諸元から取り、その値で作図してください。
- 「作図」で経路を打つと、掃過範囲がその場で表示されます。旋回方法は、走りながら操舵する通常旋回と、コーナーで一旦停止してハンドルを据え切りし最小旋回半径で回る据え切り旋回から選べます。無料版は据え切り旋回で計算します。通常旋回で作図した経路を保存して書き出すには、そのプロジェクトのProject PassまたはAnnual Passが必要です。国内の作図ソフトが使っている区分と同じ考え方です。
- 余裕幅(車体・前方・後方)を設定し、縁石や柱との離れを見込みます。
- 書き出します。PNG/JPEGは無料、DXF/DWGはProject Passです。DXFはAutoCAD 2013形式(AC1027)で単位はミリメートル、DWGはAutoCAD 2000形式(AC1015)です。掃過範囲、前軸中心の軌跡、車両外形、諸元表はそれぞれ別のレイヤに分かれています。書き出し前に基準点を置くと、その点が原点(0,0)になります。
よくある間違い
- トラック単体の掃過範囲で判断する。 連結車は2つの車体が別の半径を描きます。2軸トラックの図で足りることはまずありません。単車の諸元の読み方はトラックの軌跡図と最小回転半径で扱っています。
- 諸元表の最小回転半径を所要道路幅として読む。 12mは最外側のわだちについての半径です。車体の外形が通る幅ではありません。
- 内側の境界を車体後部の角で引く。 内側を決めるのは車軸位置にある後輪です。角をなぞると図が実際より狭く出ます。
- 連結角度を無制限と仮定する。 連結部には機械的な限界があります。最大連結角度は実車の諸元から取り、その値で作図してください。
- 設計車両の16.5mで確認して終わりにする。 実際に入ってくる組合せが設計車両より長い場合や、前軸距・後軸距が違う場合は、その諸元で描き直してください。
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セミトレーラ連結車の掃過範囲の計算はPathSweeperで行えます。汎用の標準車両4種での確認とPNG/JPEGの書き出しはブラウザ上で無料です。任意寸法の車両を作って保存するのも無料で、その車両をプロジェクトで使うことと、DWG/DXFの読み込み、DXF/DWGの書き出しはProject Pass(1プロジェクトごとの買い切り、€39)で使えます。