車両軌跡作図システムの比較:APS-K、フォーラムエイト、AutoCADアドオンなど軌跡図を描くCADソフト

車両の軌跡図をCADで描くためのソフトには、フォーラムエイトの「車両軌跡作図システム」、エムティシーの車両走行軌跡作図システム「APS-K」とAutoCAD版の「APS-K for AutoCAD」があり、そこにオートデスクのVehicle Tracking、IntelliCADやExcelで動く無料の作図ツール、ブラウザで動くサービスが加わります。どれも道路構造令の設計車両や実在の車両が交差点や敷地の出入口を通れるかを図面で確かめるための道具ですが、動作環境(AutoCADの中か、単体のWindowsソフトか、ブラウザか)と、図面をどの形式でやり取りできるかが大きく違います。
本稿では、各社のページ(フリーソフトは配布ページの作者の説明)に書かれていることだけを、2026年10月8日時点の内容で整理しました。価格は各社のページに掲載されていますが、改定されることもあるので本文には書いていません。なお、PathSweeperは当社の製品です。PathSweeperの節は、その前提でお読みください。
一覧で見る車両軌跡作図ソフト
各欄は各社のページの記載によります。「記載なし」は、参照したページに該当する記述が見当たらなかったという意味で、その機能がないという意味ではありません。
| 製品 | 動作環境 | 図面の読み込み | 図面の書き出し | ライセンス形態 |
|---|---|---|---|---|
| 車両軌跡作図システム Ver.4(フォーラムエイト) | Windows 11の単体ソフト | CADファイル(AutoCAD形式、SXF形式) | SXF、DWG、DXF、JWW、JWC | 購入、または2か月・3か月・6か月のレンタルライセンス |
| APS-K(エムティシー) | Windows 11の単体ソフト | 現況平面図(DXF、SFC、P21、BMP、TIFF) | 記載なし | ライセンス購入 |
| APS-K for AutoCAD(エムティシー) | AutoCAD 2024~2027、Civil 3D 2024~2027のアドオン(LTを除く) | AutoCADの図面上で作図 | AutoCADの図面上で作図 | ライセンス購入 |
| Vehicle Tracking 2027(オートデスク) | AutoCAD 2027、Civil 3D 2027、AutoCAD Architecture 2027の中で動作 | ホストのAutoCADの図面上で作図 | ホストのAutoCADの図面上で作図 | 本稿では確認していません |
| 車両の旋回軌跡作図(シビルテック) | VBAを搭載したIntelliCAD(Windows 2000~7、32bit) | IntelliCADの図面上で作図 | IntelliCADの図面上で作図 | 無料 |
| 車両軌跡作成 EXCEL版(作者:森田伸二) | Excel | 記載なし | DXF | 無料 |
| AutoTURN Online(トランソフト、InSTRATO) | ブラウザ | dxf、dwg、jpg、png、Googleマップ | 形式の記載なし | 年間または月間のサブスクリプション |
| PathSweeper(当社) | ブラウザ | PDF、JPG、PNG(無料)、DWG、DXF(Project Pass(プロジェクトパス)) | PNG、JPEG、PDF画像(無料)、DXF、DWG(Project Pass) | 無料版、1プロジェクトごとの買い切り、年額 |
分かれ目は、ソフトがAutoCADの中にあるか外にあるかです。中にあれば軌跡図はそのまま手元の図面の一部になります。外にあれば、軌跡図をどの形式で書き出し、元の図面のどこに重ねるかを考える必要があります。以下、この順に見ていきます。
AutoCADの中で描く:APS-K for AutoCADとVehicle Tracking
APS-K for AutoCADは、エムティシーが「AutoCADのアドオン(組み込み)ソフト」と説明している製品です。AutoCADのポリラインコマンドで走行ルートを引き、そのルートを選ぶと軌跡図が作成されます。ルートを検討し直すときはポリラインの頂点を動かせば、軌跡図も自動で更新されます。動かすにはAutoCAD 2024~2027またはCivil 3D 2024~2027が必要で、AutoCAD LTは対象外です。Ver10.5は2026年4月28日に公開されています。
走行パターンは、ルート走行、Civil 3Dで作った線形上の走行、S字走行、「停止旋回・解法1(止まりハンドル)」と「停止旋回・解法2(止まりハンドル)」、停止旋回・Uターン、バック走行(小型車と普通車のみ)です。登録車両は小型自動車と小型自動車等、普通自動車(トラック、バス)、ホイールクレーン、セミトレーラ、フルトレーラ、ポールトレーラ、クローラ車両、連節バスで、同社は「道路構造令記載の車両以外にも多数登録、任意のサイズ登録が可能です」と書いています。
Vehicle Trackingはオートデスクの製品です。同社の日本語ヘルプによれば、Vehicle Tracking 2027は「ホスト アプリケーション内で動作するため、ホスト アプリケーションが必要」で、ホストとして挙げられているのはAutoCAD 2027、Civil 3D 2027、AutoCAD Architecture 2027です。OSは64ビット版のWindows 11またはWindows 10(バージョン1809以降)です。単体では動かないので、手元のAutoCADの年版と合わせて検討することになります。
AutoCADやCivil 3Dで毎日のように道路や交差点を設計している事務所なら、この2つのどちらかを使うのが最も手間の少ない方法です。軌跡図が最初から手元の図面の中にあり、ルートを直せば軌跡図も追従します。逆に、AutoCADのライセンスがない、またはLTしかない場合は、どちらも候補から外れます。
CADの外で描いてCADに渡す:フォーラムエイトとAPS-K
フォーラムエイトの車両軌跡作図システム Ver.4は、Windows 11で単体で動くプログラムです。初版は2010年9月15日、最新版のVer.4は2020年9月18日のリリースです。走行コースはマウスや座標入力で作るほか、AutoCAD形式やSXF形式のCADファイルを読み込めます。図面はSXF、DWG、DXF、JWW、JWCで出力できるので、AutoCADで受け取る場合も、Jw_cadのJWW形式で受け取る場合も、変換を挟まずに渡せます。
旋回方法は「通常旋回」(一定の旋回半径での旋回)、「通常旋回(クロソイド曲線法)」(緩和曲線区間を考慮した旋回)、「据え切り旋回」(コーナーで一旦停止し、ハンドル据え切りで最小旋回半径となる状態での旋回)の3つに分けられています。申請用旋回軌跡図(JASO Z 006-92様式)の作図機能と、特殊車両通行許可申請に必要な車両旋回軌跡図の作図機能も備えています。ライセンスは購入のほか、2か月・3か月・6か月のレンタルライセンスがあり、体験版の申込みも受け付けています。
エムティシーのAPS-Kは、AutoCAD版とは別の、Windows 11で単体で動く製品です。現況平面図をDXF、SFC、P21、BMP、TIFFで読み込み、その上で車両軌跡図をマウスで調整します。走行パターンにはルート走行、停止旋回、セミトレーラのバックを含む切り返し走行があります。任意の車両形状を作れるほか、積載物の形状も作れて、車両からはみ出した積載物が干渉するかを確かめられます。アニメーションは動画ファイル(avi形式)に出力できます。オプションの特車申請用軌跡作図システム「OP-JK」を追加すると、特車申請に必要な軌跡図を作成できます。図面をどの形式で書き出せるかは、製品ページには書かれていません。
CADの外で描く道具を選ぶときに確かめるべきなのは、納品先が受け取れる形式で書き出せるかどうかです。JWWで納める必要があるなら、JWWを出力できると明記しているのはこの中ではフォーラムエイトです。
トレーラーの軌跡図をCADに載せる
連結車を扱えるかどうかは、製品によってはっきり違います。各社のページの記載は次のとおりです。
| 製品 | 連結車についての記載 |
|---|---|
| 車両軌跡作図システム Ver.4 | セミトレーラ(トレーラ部はトリプルスまで)、フルトレーラ(ドリー式、センターアクスル式)、ポールトレーラ、連結バス。セミトレーラの切り返し(バック)に対応 |
| APS-K | 切り返し走行(セミトレーラのバック) |
| APS-K for AutoCAD | セミトレーラ、フルトレーラ、ポールトレーラ、連節バス。バック走行は小型車と普通車のみ |
| 車両の旋回軌跡作図(シビルテック) | トラックとセミトレーラの単純旋回、S字旋回、ヘアピン走行 |
| 車両軌跡作成 EXCEL版 | 作者の説明によればセミトレーラも描け、バック軌跡にも対応 |
| PathSweeper | 道路構造令のセミトレーラ連結車を「日本」ライブラリに収録。任意寸法の車両ではセミトレーラとセンターアクスル式のトレーラを作れる |
PathSweeperのセミトレーラ連結車について、ひとつ補足があります。道路構造令第4条第2項の表は前軸距4m・後軸距9mを定めていますが、連結ピン(キングピン)の位置は定めていません。そこでライブラリでは、連結ピンをトラクタの後軸の真上に置いてモデル化しています。実在のトラクタで確かめる場合は、その車両の第五輪(カプラ)の位置を任意寸法の車両に入力してください。任意寸法の車両の作成と保存は無料で(ログインしたアカウントが必要です)、その車両をプロジェクトで使うときに、そのプロジェクトのProject PassまたはAnnual Passが必要になります。連結車の作図そのものはセミトレーラ連結車の軌跡図で詳しく扱っています。
ブラウザで動くもの:PathSweeperとAutoTURN Online
PathSweeper(当社の製品)
PathSweeperはブラウザだけで動き、インストールは不要で、アカウントを作らずに始められます。
無料で使えるのは、汎用の標準車両4種(乗用車・小型貨物車・2軸トラック・バス)での作図です。PDFや画像の図面を下敷きにして(PDFは無料アカウントが必要です)縮尺を合わせ、経路を作図すると掃過範囲がその場で表示され、PNG・JPEG・PDF画像(同じ画像をPDFに収めたもの)で書き出せます。この4種は一般的な寸法の雛形で、公式の設計車両ではありません。
Project Pass(プロジェクトパス、1プロジェクトごとの買い切り、€39)を購入すると、そのプロジェクトで公式設計車両107車種のライブラリが使えます。道路構造令第4条第2項の設計車両4種(小型自動車、小型自動車等、普通自動車、セミトレーラ連結車)は「日本」ライブラリにあり、諸元は表の値のとおりです(最小回転半径は車両前端の角を基準にした半径に換算して収録しています)。ほかにDWG・DXFの読み込みと、DXF・DWGの書き出しが加わります。継続して使う場合はAnnual Pass(€399/年)で、すべてのプロジェクトに同じ機能が付きます。
ライブラリにない車両は、上で触れたとおり任意寸法の車両として自分で作れます。
旋回方法は、「設定」で通常旋回と据え切り旋回を切り替えます。PathSweeperの通常旋回は操舵の速さに上限をかけて計算するもので、考え方としてはフォーラムエイトの「通常旋回(クロソイド曲線法)」に近いものです。無料版は据え切り旋回で計算します。通常旋回は画面上で試せますが、通常旋回で作図した経路を保存して書き出すには、そのプロジェクトのProject PassまたはAnnual Passが必要です。
AutoCADとのやり取りでは、DXFはAutoCAD 2013形式(AC1027)、DWGはAutoCAD 2000形式(AC1015)で書き出します。書き出したDXF・DWGの単位はミリメートルで、書き出し前に図面上に置いた基準点が原点(0,0)になります。DWGやDXFを読み込んだ図面から書き出した場合も同じで、元の図面の座標系は引き継がれません。AutoCADで元の図面に重ねるときは、基準点にした位置(建物の角など)を目印に合わせてください。DXF・DWGの書き出しには縮尺合わせが済んでいることが前提です。掃過範囲、前軸中心の軌跡、車両外形、諸元表などはPATHSWEEPER_SWEPT_AREAのような名前の付いたレイヤに分かれて入ります。手元の図面がDWGで、DXFしか読めないソフトで使いたい場合は、無料のDWGからDXFへの変換ページも使えます。
できないことも書いておきます。JWWやJWCでは書き出せません。JASO Z006の様式で組んだ申請用の図面も出力しませんし、特殊車両通行許可申請の図面を作る機能もありません。駐車場の区画割りを作る機能もありません。PathSweeperは「この車両がここを通れるか」を図面で示すための道具で、道路設計のソフトではありません。
AutoTURN Online(トランソフト)
2026年10月8日時点で、AutoTURN Onlineの日本語ページはトランソフトの「InSTRATO」に移っています。InSTRATOは同社が「交通設計・交通計画のためのWebプラットフォーム」と説明しているもので、AutoTURN OnlineはParking Design、Collaborationと並ぶそのソリューションのひとつです。AutoTURN Onlineのページは「2,800台以上の車両」を挙げ、図面ファイル(dxfまたはdwg)と画像(jpg・png)の読み込み、またはGoogleマップの使用を説明しています。同じページには「※カスタム車両の作成は現在サポートされていません。」という注記があります。料金ページに並んでいるのは年間サブスクリプションと月間サブスクリプションで、すべてのプランで全機能が使えるとされています。
車両ライブラリの広さを優先するなら、AutoTURN Onlineの強みははっきりしています。機能ごとの違いはAutoTURN Onlineとの比較にまとめています。
無料で使えるもの
無料のものは、何ができるかがそれぞれ大きく違います。
- **シビルテックの「車両の旋回軌跡作図」**は、同社のページで価格が「フリーソフト(無料)」とされています。VBAを搭載したIntelliCAD(IJ IntelliCAD plus以上)で動き、トラックとセミトレーラの単純旋回、S字旋回、ヘアピン走行を作図します。いずれもVer.0.1(試作版)で最新登録は2000年、動作環境はWindows 2000/XP/VISTA/7(32bit)です。
- **「車両軌跡作成 EXCEL版」**は、作者の森田伸二氏がVectorでフリーソフトとして公開しています。作者の説明によれば、Excelで乗用車、トラック、セミトレーラなどの軌跡を描き、DXFファイルも作成でき、複数の旋回の組み合わせとバック軌跡にも対応しています。
- PathSweeperの無料版は、上に書いたとおり標準車両4種での作図と、PNG・JPEG・PDF画像の書き出しまでです。
- フォーラムエイトは無料版ではなく、体験版の申込みと、2か月から借りられるレンタルライセンスを用意しています。
無料のツールで描いた図を提出に使う場合も、使った車両の諸元と旋回方法の前提を図面に書き添えておくと、確認する側が迷いません。
用途別の選び方
| 状況 | 候補 |
|---|---|
| AutoCADやCivil 3Dで毎日設計し、軌跡図も同じ図面の中で扱いたい | APS-K for AutoCAD、Vehicle Tracking(AutoCADの年版を確認) |
| 特殊車両通行許可申請の軌跡図を作りたい | フォーラムエイト(申請用の作図機能)、APS-KにOP-JKを追加 |
| JWWやJWCで納品する | フォーラムエイト |
| ドリー式のフルトレーラやポールトレーラ、クレーン車を扱う | フォーラムエイト、エムティシー(対応車種を各社ページで確認) |
| CADのライセンスがなく、年に数件、敷地の出入口や荷さばき場を確かめたい | PathSweeper(無料版、必要なときだけProject Pass) |
| ライブラリにない車両をブラウザで作って使いたい | PathSweeper(任意寸法の車両) |
| 2,800台以上の車両ライブラリから選びたい | AutoTURN Online |
どのソフトを使っても、軌跡図の読み方は同じです。外側の境界を決めるのは車体の前外側の角、内側の境界を決めるのは車軸位置の後輪で、最小回転半径の数字だけでは通れるかどうかは分かりません。その読み方と作図の手順は車両軌跡図の書き方で説明しています。
手元の図面で動きを先に確かめたい場合は、PathSweeperで軌跡図を描くことができます。インストールもアカウントも不要で、標準車両4種での作図とPNG・JPEG・PDF画像の書き出しまでは無料です。道路構造令の設計車両や任意寸法の車両をプロジェクトで使うこと、DXF・DWGの書き出しは、Project Pass(1プロジェクトごとの買い切り、€39)で使えます。