「道路構造令の解説と運用」とは:無償で読める範囲と、本にしか載っていない範囲

**「道路構造令の解説と運用」**は、日本道路協会が編集・発行する道路構造令の解説書で、政令そのものではありません。政令の条文はe-Gov法令検索で無償で読め、設計車両の諸元表も第4条第2項に印刷されています(道路構造令の設計車両に整理してあります)。本書を探す人が知りたいのはたいてい次の5点です。どれが現行版か、PDFがあるか、いくらでどこで買えるか、買わずに読める範囲はどこまでか、そして埼玉県や北陸地方整備局の設計マニュアルが「P487 表4-14」のように参照しているページには何があるのか。本稿はその順に、発行元と頒布元、国立国会図書館、国土交通省、各マニュアルのページに書かれている範囲だけで答えます。本書の中身は引用しません。手順そのものが必要なら、本書を購入してください。
政令ではなく、日本道路協会の解説書
道路構造令は昭和45年政令第320号、内閣が定める政令で、道路の構造の一般的技術的基準を定めています。e-Gov法令検索で全文が読め、2026年10月時点でその条文に付された改正附則のうち最新のものは令和2年11月20日政令第329号です。
「道路構造令の解説と運用」は、この政令を解説する本です。発行元の日本道路協会は製品ページで、本書は「道路を計画・設計する現場の技術者が道路構造令の趣旨を正確に理解し適正な運用が行われることを主たる目的としております」と説明しています。同じ商品説明は、平成30年の改正で重要物流道路に用いる設計車両や建築限界の規定が追加され、平成31年に自転車通行帯、令和2年に歩行者利便増進道路と自動運行補助施設の規定が追加されたこと、今回の改訂では近年の改正内容の解説に加え、特定車両停留施設やボラード(駒止)の解説も反映したことも挙げています。国立国会図書館の書誌は本書を「日本道路協会 編集」、NDC 514.1(道路工学)として収録しています。
丸善出版のページに掲載された目次によれば、本書は「道路構造令」と「道路構造令施行規則」の条文に続いて、I 総則、II 道路の計画・設計の考え方、III 道路の構造の三部構成で、IIIの第1章が「道路の区分と設計速度,設計車両」、第4章が「平面交差」です。
最新版はどれか
「最新」という問いには、内容の版と、刷や媒体の違いを分けて答える必要があります。
- 内容の版は「道路構造令の解説と運用(令和3年3月)」です。日本道路協会の電子図書利用サービスも丸善出版も、この題で販売しています。
- 紙の本は、丸善出版のページによれば、2021年4月刊行の令和3年3月版(ISBN 978-4-88950-138-4)の価格改訂版が2026年4月10日に出ています(ISBN 978-4-88950-150-6、A5判、720ページ)。国立国会図書館はこれを「[2026] 改訂版」、2026.4(第5刷)として収録しています。
- 電子書籍版は、2024年10月1日発行、ISBN 978-4-88950-140-7、720ページ(55.1MB)です。製品ページの「電子図書限定:更新情報」によれば、2024年10月1日に図書内リンク機能を設定したVer1.00として販売が始まり、2024年12月27日に正誤表No.1と2を反映してVer.2.00、2025年5月1日に一部の頁の図・写真のカラー化と2025年3月17日掲載の正誤修正を反映してVer.3.01、2026年2月27日に正誤表No.9からNo.18を反映してVer.4.01になっています。発行年月日の2024年10月1日と改訂のVer.4.01(2026年2月27日)は別のことなので、引用するときは分けて書いてください。
それより前の版として平成27年6月版があり、丸善出版のページは関連商品として「道路構造令の解説と運用(平成27年6月版)」を挙げています。2026年10月時点で公開されている埼玉県の交差点計画の資料は、この平成27年6月版のページを出典にしています。北陸地方整備局の交差点設計の章は関係図書に令和3年3月版(R3.3)を挙げ、「使用にあたっては、最新版を使用するものとする」と注記しています。参照先のマニュアルがどの版を挙げているかを先に確かめ、ページ参照はその版で読んでください。版が違えば同じページ番号が同じ内容を指すとは限りません。
PDFはあるか
無償で配布されているPDFは、発行元と頒布元のページにはありません。日本道路協会が販売しているのは、種類が「電子書籍」の電子図書です。同サービスの利用方法とアプリ案内のページによれば、購入した図書は無料のリーダーアプリ「日本道路協会」またはウェブブラウザで閲覧でき、最大2端末までアプリにダウンロードしたりブラウザで閲覧したりできます。閲覧システムにはbookendを使っています。印刷については、よくある質問が「ブラウザ版では閲覧中のページのみ印刷することができます。アプリ版では印刷できません」と答えています。製品ページには「立ち読み」のボタンがあります。製品ページ自体にPDFという語はありません。
つまり「道路構造令の解説と運用 pdf」で探しているものが無償のファイルなら、それは発行元と頒布元のページには出ていないものです。無償で読めるのは次の節の資料です。
価格と購入先
| 媒体 | 価格 | 購入先 | 発行・出版年月日 | ISBN |
|---|---|---|---|---|
| 電子書籍 | 8,415円(税込) | 日本道路協会 電子図書利用サービス | 2024年10月1日発行 | 978-4-88950-140-7 |
| 紙(価格改訂版) | 10,340円(税込) | 丸善出版(頒布)、発行は日本道路協会 | 2026年4月10日 | 978-4-88950-150-6 |
国立国会図書館の書誌は、紙の本の定価を「9400円」と記録しています。価格と在庫は変わることがあるので、購入前に発行元と頒布元のページで確かめてください。
無償で読める範囲
本書を買わなくても読めるのは、次の二つです。
- 政令の条文。 e-Gov法令検索の道路構造令です。第4条第1項は、どの種級の道路でどの設計車両が「安全かつ円滑に通行することができるようにするものとする」かを定め、第2項が設計車両4種の諸元を表で定めています。表の値は道路構造令の設計車両に転記してあります。平面交差については第27条第2項が、道路が同一平面で交差または接続する場合、必要に応じ屈折車線、変速車線もしくは交通島を設け、または「隅角部を切り取り」、適当な見とおしができる構造とすると定めています。隅切りの長さは政令にはありません。
- 国土交通省の解説資料。 道路局の「道路構造令の各規定の解説」のページに、全体版(6.4MB)と、「Ⅰ 道路構造令の概要」「Ⅱ 現行道路構造令改正の経緯」「Ⅲ 道路構造令の各規定の解説」(個別規定ごとに「1.道路の区分と設計車両・設計速度」「2.幅員構成に関する規定」「3.建築限界」「4.線形」「5.視距」「6.構造物・工作物」「7.専用道路」)「Ⅳ 道路構造令の特例規定の解説」の分冊がPDFで公開されています。Ⅲの分冊「1.道路の区分と設計車両・設計速度」の「1-2 設計車両」は、車両の大きさが道路の幅員構成、曲線部の拡幅、交差点の設計、縦断勾配、視距といった構造要件を決める際の基礎的条件になるため設計車両の諸元を定めている、と説明し、第4条の設計車両の表と、道路の種級ごとの適用を示しています。
この二つで、政令が何を定めているかと、国土交通省がそれをどう説明しているかは読めます。読めないのは、本書が載せている運用の手順です。
本にしか載っていない範囲:マニュアルが参照するページ
都道府県や地方整備局の設計マニュアルには、交差点の各部の標準値を自分の表に載せたうえで、出典として本書のページや節を挙げているものがあります。本稿はそのページ参照を転記しますが、表の値は転記しません。
埼玉県の交差点計画の資料(第3章)は、参考図書に「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)(公社)日本道路協会」を挙げ、3-2-10「隅切り」で、第4種道路の交差点における隅切り長は原則として表3-7の値とし、ただし「特に右左折交通量の多い場合、設計車両を変更する場合、広幅員の歩道等を有する場合、道路の交差角が90度からかなり異なる場合等特別な事情を考慮すべき場合は、別途検討すること」、第3種道路では集落が形成されている地域において表3-7の値を参考に決定する、としています。表3-7「隅切り長の標準値」の直後には「図3-13 出典:日本道路協会「道路構造令の解説と運用(平成27年6月)」P487 表4-14」と記されています。同じ章は、右折車線や導流路などの図表の出典としてP446、P463、P464(表4-4)、P469(表4-5)、P471(表4-6)、P472(表4-7)、P475、P479(表4-9)、P517(図5-10)も挙げています。
北陸地方整備局の交差点設計の章(第2章)は、関係図書の表に令和3年3月版を挙げ、本線に摺り付く取付道路の縦断線形は本書の「4-3-2曲線半径および縦断線形」によるとしています。隅切りについては、交差する道路の相互が第4種の道路で隅角部を円曲線で処理する場合、表2.2の隅切り長に適合する曲率半径を標準とし、「隅切り長を示す表2.2は「道路構造令の解説と運用」に準拠しているが、この値は右左折交通量等からみて、特別に導流路等の設計を行う必要のない場合の標準値である」と書いています。原則的な規格は「道路構造令」と「平面交差の計画と設計」により、本章は実情を勘案した補足にとどめた、とも断っています。
一方、大阪府の審査基準「道路に関する基準」のように、有効幅員の組み合わせごとのすみ切長さを自前の表で示し、本書を参照しない文書もあります。
つまり隅切りの標準値は政令にはなく、埼玉県の資料は本書の表をその出典に挙げ、北陸地方整備局の章は自分の表が本書に準拠していると書いています。マニュアルのページ参照が指している手順を読みたいなら、本書のその版にあたる必要があります。値だけでなく、どの条件でその値を外れて別途検討するかが、埼玉県と北陸地方整備局の両方の資料で但し書きになっていることに注意してください。
表の値は道路の数字、掃過範囲は車両の数字
標準値の表を手に入れても、設計の確認はそこで終わりません。隅切り長や曲率半径は道路側の数字です。その隅切りの中を設計車両が実際に通れるかは、車両が掃く範囲、つまり軌跡図が示す掃過範囲で決まります。埼玉県の資料は「設計車両を変更する場合」や「交差角が90度からかなり異なる場合」を別途検討の条件に挙げています。設計車両や交差角が変われば、同じ隅切り長でも車両の通る範囲は変わるからです。
掃過範囲の外側の境界をなぞるのは、タイヤではなく車体前部の外側の角です。この角は前端オーバハングのぶん前輪より前、車体の幅のぶん外側にあるため、前輪が通る線よりさらに外を通ります。内側の境界を決めるのは車体後部の角ではなく、車軸位置の後輪です。交差角が直角から離れるほど、また設計車両が大きいほど、この差は大きくなります。隅切りの角や縁石に対して確かめる対象は、半径の値ではなく車両の掃過範囲です。
政令第4条第2項の最小回転半径は値だけが印刷されていて、どこで測るかは書かれていません。車両制限令第3条と道路運送車両の保安基準第6条は、最小回転半径を最外側のわだちについて定めています。図面で確かめるときは、この読み方で車両を作ります。諸元の値そのものは道路構造令の設計車両を参照してください。
PathSweeperでマニュアルの標準値の中の掃過範囲を描く
PathSweeperはブラウザだけで動き、インストールもアカウントも必要ありません。手順は車両軌跡図の作図手順と同じです。交差点の標準値を確かめるときに気をつける点を添えて、順に示します。
- 図面を読み込む。 交差点の平面図を画像またはPDFで読み込みます。画像の図面(5MBまで)はアカウントなしで、PDFの図面は無料アカウントで読み込めます。隅切りの角、縁石、歩道、交通島が写っている図面を使ってください。DXFやDWGの図面は、Project Pass(プロジェクトパス)またはAnnual Passのあるプロジェクトで読み込めます。
- 縮尺を合わせる。 ツールバーの「縮尺」で、長さの分かっている区間を2点で指定し、実寸を入力します。この工程は必須です。隅切り長が図面上で実寸になっていなければ、検討に意味がありません。
- 車両を決める。 車両ライブラリの「日本」に、道路構造令第4条第2項の設計車両4種が表の値のまま入っています。ライブラリの車両をプロジェクトで使うにはProject PassまたはAnnual Passが必要です。マニュアルの但し書きにある「設計車両を変更する場合」、たとえば実在の車種で確かめたいときは、「任意寸法の車両」に諸元表の値を入力します。車両を作って保存すること自体は、アカウントにログインしていれば無料です。作った車両をプロジェクトの作図に使うときに、そのプロジェクトのProject PassまたはAnnual Passが必要になります。諸元表の最小回転半径は最外側のわだちで測った半径なので、タイヤの外側で測った旋回円の直径を入力する項目に、印刷された半径の2倍の値を入れてください。
- 経路を作図する。 「作図」で、交差点に進入して曲がり、出ていく経路を引きます。右折と左折、そして進入する方向ごとに、それぞれ別の経路として描きます。交差角が直角でない交差点では、鋭角側と鈍角側で掃過範囲が違います。
- 掃過範囲を読む。 掃過範囲はリアルタイムで表示されます。「車輪の軌跡を表示」で内側の後輪が隅切りの角や縁石に乗るかどうかを、「余裕幅」で縁石からの離れを確かめます。「設定」の旋回方法は、通行を前提に広めに見るなら「通常旋回」、停止してハンドルを切る動きなら「据え切り旋回」です。通常旋回は無料で試せますが、通常旋回で描いた経路を保存して書き出すにはProject PassまたはAnnual Passが必要です。
- 書き出す。 PNG、JPEG、PDF画像(同じ画像をPDFに収めたもの)は無料で書き出せます。CADに戻すにはProject PassでDXFまたはDWGを書き出します。書き出したDXF・DWGはミリメートル単位で、書き出し前に図面上に置いた基準点が原点(0,0)になります。
表の隅切り長をそのまま図面に写し、その中で設計車両の掃過範囲を描けば、標準値が自分の交差点に当てはまるかどうかが、その場で見えます。当てはまらない場合に何をどう検討するかは、本書の手順を読んでください。
関連記事
- 道路構造令の設計車両:第4条第2項の4種の諸元表と最小回転半径の読み方。本稿が転記しない値はこちらにあります。
- 車両軌跡図の作図手順:掃過範囲の外側と内側の境界を決めるものと、作図の手順。
- 車両軌跡作図システムの比較:APS-K、フォーラムエイト、AutoCADアドオン、ブラウザの違い。
政令の条文と国土交通省の解説資料は無償で読め、運用の手順は日本道路協会の本にあります。その手順で決めた値の中を設計車両が通れるかどうかは、PathSweeperで軌跡図を描くとその場で表示されます。作図は無料で、インストールもアカウントも必要ありません。道路構造令の設計車両を使うことと、DXF・DWGの書き出しに、Project Pass(1プロジェクトごとの買い切り、€39)が必要です。