袋路状道路の転回広場:建築基準法施行令144条の4と告示1837号の読み方

袋路状道路、つまり行き止まり道路に転回広場が必要になるのは、建築基準法施行令第144条の4第1項第1号で、延長が35mを超える場合です。延長35m以下、終端が公園や広場に接続している場合、幅員6m以上の場合には転回広場なしで袋路状道路にできます。ここまでが条文の答えで、計画の実務はそこから先にあります。告示1837号は転回広場の大きさを小型四輪自動車で決めており、具体的な寸法は特定行政庁ごとに違います。そしてどの寸法を採っても、その広場で車が実際に転回できるかは、道路構造令の設計車両の諸元で軌跡図を描いて初めて分かります。本稿はその順に読み解きます。
袋路状道路と接道義務の関係
袋路状道路という言葉は建築基準法第43条第3項第5号が定義しています。「その一端のみが他の道路に接続したもの」、すなわち行き止まりの道路です。
建物を建てるには、同法第43条第1項により、敷地が道路に2m以上接していなければなりません。袋路状道路が第42条の道路であれば、この接道義務の相手になります。ただし第43条第3項第5号は、敷地が袋路状道路にのみ接する建築物で延べ面積が150m²を超えるもの(一戸建ての住宅を除く)について、避難や通行の安全のために必要と認めるときは、地方公共団体が条例で、接する道路の幅員や接道部分の長さなどの制限を付加できると定めています。一戸建て住宅はこの付加制限の対象外ですが、共同住宅や店舗を計画するなら自治体の条例を確認する必要があります。
一方、新しく道を築造して宅地を開く場合は、第42条第1項第5号の道路位置指定を受けます。その道が満たすべき基準が、建築基準法施行令第144条の4です。転回広場が出てくるのはここです。
建築基準法施行令第144条の4が認める5つの袋路状道路
同条第1項第1号は、位置指定を受ける道は「両端が他の道路に接続したものであること」を原則とし、次のいずれかに当たる場合に限って袋路状道路にできると定めています。
| 号 | 条件 | 転回広場 |
|---|---|---|
| イ | 延長が35m以下の場合 | 不要 |
| ロ | 終端が公園、広場その他これらに類するもので自動車の転回に支障がないものに接続している場合 | 不要 |
| ハ | 延長が35mを超える場合で、終端および区間35m以内ごとに国土交通大臣の定める基準に適合する自動車の転回広場が設けられている場合 | 必要 |
| ニ | 幅員が6m以上の場合 | 不要 |
| ホ | イからニまでに準ずる場合で、特定行政庁が周囲の状況により避難および通行の安全上支障がないと認めた場合 | 特定行政庁の判断 |
イの延長には注意点があります。条文は「既存の幅員六メートル未満の袋路状道路に接続する道にあつては、当該袋路状道路が他の道路に接続するまでの部分の延長を含む」としています。既存の行き止まり道路の先にさらに道を延ばす場合、35mは新設部分だけでなく、既存部分も含めて数えます。
ハの「区間35m以内ごと」の起算点は条文にありません。国土交通省住宅局長の技術的助言「建築基準法道路関係規定運用指針」(国住街第64号、平成19年6月20日)は、区間の算定について「他の道路との接続点又は自動車の転回広場の中心点を起算点とすること」と示しています。長野県の技術基準も、終端に転回広場を設ける場合の道路の長さは「当該転回広場の中心までとする」としています。
同条第1項は転回広場のほかにも、交差・接続・屈曲する箇所(内角120度以上を除く)に辺の長さ2mの二等辺三角形の隅切りを設けること(第2号)、縦断勾配が12パーセント以下で階段状でないこと(第4号)、側溝など排水施設を設けること(第5号)を求めています(第2号と第4号は、特定行政庁が周囲の状況により認めた場合を除きます)。
さらに第2項は、地方公共団体が気候、風土、土地の状況により必要と認める場合に、条例で区域を限って異なる基準を定められるとし、第3項は、基準を緩和する場合にはあらかじめ国土交通大臣の承認を要するとしています。静岡県の指定基準解説図には、熱海市の宅地造成工事規制区域で支線の縦断勾配を15パーセントまで緩和する例が載っています。計画地の条例を確認する根拠はこの第2項です。
告示1837号の基準は小型四輪自動車
ハの「国土交通大臣の定める基準」が、昭和45年建設省告示第1837号です。告示の原文は官報にあり、e-Gov法令検索には収録されていません。本文は島田市の解説図(題は「自動車の転回広場に関する基準」)と松戸市の技術基準の巻末(告示抜粋、題は「道に設ける自動車の転回広場に関する基準を定める件」)に転載されており、転載された本文が定めているのは次の2点です。
- 道の中心線から水平距離で2mを超えて離れた区域に、小型四輪自動車のうち最大なものが2台以上停車できる大きさであること。
- 小型四輪自動車のうち最大なものが転回できる形状であること。
転載された本文に広場の幅や長さ、半径の数値はなく、書かれているのは基準にする車両です。それが小型四輪自動車です。告示はこれを、道路運送車両法施行規則(昭和26年運輸省令第74号)別表第1に規定する小型自動車で四輪のもの、と定義しています。別表第1の小型自動車は、長さ4.70m以下、幅1.70m以下、高さ2.00m以下を上限とする区分です(軽自動車などを除く。内燃機関を原動機とするものは、軽油と天然ガス専用を除き総排気量2.00リットル以下)。「最大なもの」とは、この上限いっぱいの車ということになります。
ここで道路構造令第4条第2項の設計車両の表を開くと、小型自動車の長さ4.7m、幅1.7m、高さ2.0mは、別表第1の上限と同じ数字です。道路構造令はさらに前端オーバハング0.8m、軸距2.7m、後端オーバハング1.2m、最小回転半径6mを印刷しています。告示は車両の回転半径や軸距には触れていないので、転回広場の中で車がどう動くかを図面で確かめるには、この設計車両の諸元を借りるのが、法令に印刷された値だけで完結する方法です。本稿の作図例もこの車両で行います。
転回広場の寸法は特定行政庁ごとに違う
告示が性能で書かれているため、具体的な形と寸法は各特定行政庁が技術基準や解説図で示しています。その内容は同じではありません。
- 習志野市と松戸市の技術基準は、告示第1号に当たるものとして、小型四輪自動車1台につき幅2.0m(道路と直角に停車する場合は2.5m)以上、長さ5.0m以上の広場で、車の出入りする部分の前後または左右に辺の長さ2.0m以上の二等辺三角形のすみ切りを設けたものを、告示第2号に当たるものとして、道路幅員を含めて直径8.0mの転回広場またはこれと同等以上の大きさのものを認めています。両市はさらに、令第144条の4第1項第1号ホの運用として、幅員4.5m以上5.0m未満なら50m、5.0m以上5.5m未満なら60m、5.5m以上6.0m未満なら70m以内ごとに転回広場を設ける表を置いています。
- 大阪府の参考図は、終端ががけ地や川、既存建築物などに接する場合について、指定道路の延長が70m以下で、終端および区間35m以内ごとに半径6m以上の自動車の転回広場またはT字型道路(いずれも有効幅員4m以上)を設けたものとしています。延長50m以下で有効幅員6m以上の場合、延長100m以下で有効幅員6m以上かつ中間地点に十字型またはT字型道路を設けた場合も別に挙げています。
- 静岡県と島田市の解説図は、「中間に設けるもの」5種と「終端に設けるもの」3種の形状を別図で示し、「寸法は有効幅とする」と注記しています。寸法は図に書き込まれているので、本稿では転記せず、原図を参照してください。
- 長野県の技術基準は、転回広場を「側溝又は縁石等の構造物を用いて表示する」ことを求め、幅員と長さの計測を側溝等の内側で行うとしています。
つまり「転回広場の寸法」に全国共通の答えはなく、計画地の特定行政庁の図が答えです。本稿に挙げた数値も、それぞれの自治体の文書に書かれている範囲でしか使えません。
直径8mの広場で小型自動車は一度には回れない
寸法表を手に入れても、設計はまだ終わりません。道路構造令の小型自動車の最小回転半径は6mです。この値は、車両制限令第3条と道路運送車両の保安基準第6条が最外側のわだちについて測ると定めている半径で、道路構造令自体は測り方を書いていませんが、本稿もその読み方で扱います。半径6mということは、最も外側のタイヤが描く円の直径が12mです。しかも掃過範囲の外側の境界をなぞるのは、タイヤではなく車体の前外側の角で、前端オーバハングのぶん前輪より前、車体の幅のぶん外側にあるため、タイヤの線よりさらに外を通ります。内側の境界を決めるのは車体後部の角ではなく、車軸位置の後輪です。
したがって、道路幅員を含めて直径8.0mの転回広場では、小型自動車は一度のハンドル操作では回れません。習志野市や松戸市が認めている直径8mの広場でも、T字型の広場でも、最小回転半径6mの小型自動車は、前進して入り、後退し、再び前進して出る切り返しでなければ向きを変えられません。大阪府の半径6m以上という値は、ちょうど小型自動車の最小回転半径と同じですが、それでも車体の角はその円の外を通ります。
転回広場の検討で確かめなければならないのは、だから次の二つです。
- 切り返しの各区間(前進、後退、前進)の掃過範囲が、それぞれ広場と道路の有効幅員の中に収まること。
- 停車の基準(2台以上)を満たす大きさと、転回の基準を満たす形状が、同じ図面の上で両立していること。
告示が2台の停車と転回を別々の号に分けているのは、この二つが別の性能だからです。
PathSweeperで転回広場の軌跡図を描く
検討は図面上の作業なので、手順も図面から始まります。PathSweeperはブラウザだけで動き、インストールもアカウントも必要ありません。
- 図面を読み込む。 位置指定の申請図や配置図を画像またはPDFで読み込みます。画像の図面(5MBまで)はアカウントなしで、PDFの図面は無料アカウントで読み込めます。縁石、側溝、擁壁、植栽、電柱など、動かせないものが写っている図面を使ってください。DXFやDWGの図面は、Project Pass(プロジェクトパス)またはAnnual Passのあるプロジェクトで読み込めます。
- 縮尺を合わせる。 ツールバーの「縮尺」で、長さの分かっている区間を2点で指定し、実寸を入力します。この工程は必須です。有効幅員4mが図面上で4mになっていなければ、以降の検討に意味がありません。
- 車両を決める。 無料で使える標準車両の乗用車は一般的な寸法の雛形で、当たりを付けるには十分です。告示の小型四輪自動車に合わせて確かめるなら、車両ライブラリの「日本」に道路構造令第4条第2項の設計車両4種が表の値で入っており、小型自動車を選びます。ライブラリの車両をプロジェクトで使うにはProject PassまたはAnnual Passが必要です。特定の実在車種で確かめたい場合は「任意寸法の車両」に諸元表の値を入力します。車両を作って保存すること自体は、アカウントにログインしていれば無料です。作った車両をプロジェクトの作図に使うときに、そのプロジェクトのProject PassまたはAnnual Passが必要になります。諸元表の最小回転半径は最外側のわだちで測った半径なので、タイヤの外側で測った旋回円の直径を入力する項目に、印刷された半径の2倍の値を入れてください。
- 経路を作図する。 「作図」で、広場に進入する前進の経路、後退の経路、出ていく前進の経路を、それぞれ別の経路として引きます。ツールバーで前進と後退を切り替えます。一本の経路で済ませず、切り返しの各区間を分けて描くのが要点です。
- 掃過範囲を読む。 掃過範囲はリアルタイムで表示されます。「車輪の軌跡を表示」で内側の後輪が縁石に乗るかどうかを、「余裕幅」で側溝や縁石からの離れを確かめます。「設定」の旋回方法は、転回広場のように停止してハンドルを切る場面では「据え切り旋回」が実態に近く、通行を前提に広めに見るなら「通常旋回」です。通常旋回は無料で試せますが、通常旋回で描いた経路を保存して書き出すにはProject PassまたはAnnual Passが必要です。
- 書き出す。 PNG、JPEG、PDF画像(同じ画像をPDFに収めたもの)は無料で書き出せます。CADに戻すにはProject PassでDXFまたはDWGを書き出します。書き出したDXF・DWGは常にミリメートル単位で、書き出し前に図面上に置いた基準点が原点(0,0)になります。DWGやDXFを読み込んだ図面から書き出した場合も同じで、元の図面の座標系や単位は引き継がれません。CAD側で基準点を図面上の同じ点に合わせて重ねてください。
転回広場の計画でよくある間違い
- 道路幅員と有効幅員を混同する。 大阪府の参考図は「道路幅員はいずれも有効幅員とする」と断り、静岡県の別図も「寸法は有効幅とする」としています。側溝や縁石の内側で測った幅が検討の幅です。長野県の技術基準は、幅員を側溝等の内側より計測すると明記しています。
- 35mの数え方を間違える。 既存の幅員6m未満の袋路状道路に接続する場合、延長には既存部分が含まれます(令第144条の4第1項第1号イ)。区間の起算点は接続点または転回広場の中心点です(国土交通省運用指針)。
- 寸法表だけで転回できると思う。 直径8mの広場で最小回転半径6mの車は一度には回れません。切り返しの各区間を描いて、掃過範囲が有効幅員に収まることを確かめてください。
- 広場に駐車や植栽を置く。 告示の停車の基準は広場の大きさの基準であって、駐車場にしてよいという意味ではありません。植栽や電柱が広場に入れば、使える有効幅はその分だけ減ります。
- 基準の車両を取り違える。 告示1837号の車両は小型四輪自動車で、道路構造令の普通自動車やトラックではありません。逆に、ごみ収集車や消防車の進入は告示1837号が扱っていない別の問題で、自治体の別の基準で確かめる必要があります。
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図面を読み込み、縮尺を合わせ、切り返しの経路を引けば、転回広場に収まるかどうかはその場で表示されます。PathSweeperで軌跡図を描くのは無料で、インストールもアカウントも必要ありません。道路構造令の設計車両を使うことと、DXF・DWGの書き出しに、Project Pass(1プロジェクトごとの買い切り、€39)が必要です。